二つの運命の出会いが放つ
特別な輝き

本作には主人公薫にとって、運命的な出会いが二つある。千太郎、そして律子との出会いだ。クランクイン前に三木監督は薫と千太郎の友情の深さについて、ある種の「ラブストーリーでもある」と俳優たちに伝えていた。それがよく分かるのが、二人が最初に出会う屋上のシーンだ。場所は佐世保の街を一望できる坂の上にある聖和女子学院。撮影の準備段階では少し雲がかかっていたが、現場に知念と中川が現れると雲の合間から太陽が顔を出し、“屋上への出口から光が溢れている”という台本のト書き通り、まばゆいばかりの光が現場に注ぐ。三木監督作品の特徴のひとつとして光の映像美が挙げられるが、その日も“三木マジック”によって美しい光が作られていった。転校してきたばかりで教室に居場所がなく屋上へ向かう薫。屋上の入口をふさぐかのように昼寝をしている千太郎。二人が運命的に出会うシーンだがまさにラブストーリーでいう主人公とヒロインの出会いと同じように、薫が千太郎に初めて出会った衝撃が、知念の表情にとてもよく現れている。
仰向けに寝ている千太郎が薫に手を伸ばすこのシーンの構図は後半にもう一度登場する。前半は千太郎が薫を救い、後半はその逆、薫が千太郎を救うシーンとなっている。三木監督の言う「ラブストーリー」の意味がよく現れている。
そしてもう一つの出会いが、ヒロイン律子との出会いである。教室のシーンは、佐世保市にある旧花園中学校で撮影された。転向初日、教室に慣れない方言での噂話に居心地の悪さを感じている薫に、声を掛けるのが律子役の小松菜奈。原作のビジュアルに近づけるべく、メイクでそばかすを加えた小松はまさに律子そのもの。優しい律子の笑顔に思わず、薫が一目惚れするシーンだが、小松の見せる笑顔の可愛さに、知念もモニター前の監督やスタッフも「可愛すぎる!」と大絶賛。こうして薫の恋と友情は幕を開けた。